「犬の肝膿瘍って初めて聞く病気だけど、どんな症状がでるの?」
「万が一愛犬が罹患したときはどう対処すればいいの?」
はじめまして。
愛犬ちょちょが「肝膿瘍」という珍しい病気にかかってしまった飼い主のりあです
肝膿瘍闘病中のちょちょです
「犬の肝膿瘍」は珍しい病気のようで、ちょちょのかかりつけ獣医師も、夜間診療に駆け込んだ動物救急医療センターの獣医師も珍しがっていました。
犬の肝膿瘍は早期発見が重要で、初期の段階で治療を受けることができれば回復する可能性は高いのですが、治療が遅れてしまうと敗血症により多臓器不全を引き起こしたり、肝臓内の膿瘍が破裂して腹膜炎を起こし命を落とすこともある非常に怖い病気です。
早期発見・早期治療が重要な病気であるにもかかわらず珍しい症例のため、飼い主さんが、
愛犬の様子がいつもと違うな…元気ないな…
と感じて動物病院を受診しても見逃されてしまう危険性もあります。
- 犬の肝膿瘍とはどんな病気なのか
- 犬の肝膿瘍の症状や検査・治療について
- 犬の肝膿瘍を早期回復させるために私が実践したこと
- 犬の肝膿瘍の予後について(ちょちょの場合)
- 名前 ちょちょ
- 犬種 ダックスフンド
- 性別 メス
- 年齢 不明(老犬)
- 病名 肝膿瘍
犬の肝膿瘍ってどんな病気?
犬の「肝膿瘍」とは、肝臓の中に膿瘍(膿)が溜まる病気です。
犬の肝臓内に膿が溜まる原因
- 歯周病や大腸炎等が原因で、肝臓の中に細菌が侵入してしまった場合
- 術後等で肝臓に外傷が加わり、その箇所が細菌感染や炎症を起こしてしまった場合
- 膵臓や胆のう等肝臓周辺の臓器が炎症を起こし、その炎症が肝臓にも及んだ場合
- 肝臓又は周辺臓器に腫瘍がある場合
犬の肝臓内に膿が溜まる原因は多岐に渡るため特定できない場合も多くあります。
ですが発症のプロセスは「細菌感染」又は「炎症」ということはハッキリしています。
- 老犬
- 病気、怪我により免疫力が落ちている犬
- 術後まもない犬
- 肝臓、膵臓、胆のうに疾患がある犬
- 胃、大腸等その他消化器官に疾患がある犬
- 歯周病がある犬
- 糖尿病の犬
- 癌に罹患している犬
犬の肝膿瘍の主な症状
- 食欲不振
- 発熱
- 元気消失
- 黄疸
- 嘔吐
- 寒くないのに震えている
- 体重減少
犬の肝膿瘍の主な症状を見てもわかるように特徴的な症状が非常に少なく、手遅れになってしまう原因の一つとも言えます。
ちょちょがお世話になった動物救急医療センターの獣医師からも、突然敗血症や多臓器不全を起こして運び込まれる犬の中には、肝膿瘍が原因だったこともあったというお話を伺いました。
症状が非常にわかりづらい犬の肝膿瘍ですが、その中でも「発熱」「嘔吐」「黄疸」がある場合は24時間以内に動物病院を受診することを強くおすすめします。
これらの症状が出ている場合、肝膿瘍では無かったとしても緊急を要する病気に罹患している可能性が高いからです。
そして診察時に必ず獣医師に
「血液検査をやってください」と飼い主さんからお願いしてください。
犬の肝膿瘍は珍しい病気にも関わらず特徴的な症状がほとんどみられないため、受診時に症状が軽かった場合、獣医師によっては様子をみましょうと診察してしまう可能性があるからです。
犬の肝膿瘍の診断と検査
犬の肝膿瘍は症状だけで確定診断を行うのはほぼ不可能です。
そのため、血液検査・腹部エコー検査・細胞診が必要となります。
- 血液検査によってどこに炎症反応がでているのかを精査
- 肝疾患を疑う項目の数値の上昇が確認できた場合②へ
- 腹部エコー検査によって肝臓内を観察
- 肝臓内に腫瘤が確認できた場合③へ ※画像では黒い塊となって映し出されます
- 細胞診を実施し腫瘤の原因を特定・予測する
- 設備が整っている病院の場合は同時に血液培養を行うところもあります
- 腫瘤の場所によっては実施されない場合もあります
犬の肝膿瘍の治療方法
犬の肝膿瘍の治療方法は、一定期間抗生物質を投与する内科治療もしくは膿瘍の外科的切除の2つです。
まずは抗生物質や抗炎症剤を使って原因菌を退治したり炎症を抑えます。
投薬治療だけでは効果がでない場合や、一刻を争う状態の場合は膿瘍の外科的切除となります。
犬の肝膿瘍の治療期間
犬の肝膿瘍の治療期間は個体によって異なりますが、2週間~3ヶ月となります。
犬の体力・免疫力が低下していたり、症状が重症化している場合は治療期間が長引く傾向にあります。
犬の肝膿瘍を早期発見できた理由
ここからは私の経験談を元により詳しく症状やその後の経過についてお話させていただきます。
肝膿瘍という病気はある日突然襲ってきました。
2022年9月30日。
その日のちょちょは朝から食欲が無く、夕飯も半分ほど口にしただけでずっと寝ていました。
ただ、おやつは食べていたのでこの時点では特に気にしていませんでした。
様子がおかしくなり始めたのは21時を過ぎてからでした。
膝の上でうとうとしていたちょちょが突然震えだしました。
何処か痛いのかと思い全身を触ってみましたが、特に嫌がる様子はありません。
ただいつもより少し体温が高いかな?と感じました。
23時過ぎ、ちょちょが気持ち悪そうに何度かえずいた後空嘔吐しました。
その後も気持ちが悪いのか部屋中をうろうろしながら、水を飲む回数が増え、おしっこを30分間隔でするようになりました。
いよいよおかしいと感じた私はまず胆管閉塞を疑いました。
というのも、ちょちょは「胆石症」を患っているからです。
すぐに目と歯茎に黄疸がでていないか確認をしましたが、どちらも正常でした。
そうこうしているうちに2回目の嘔吐をし、下痢便もしたため(急性胃腸炎かな?)と判断し、次の日に動物病院を受診することにしました。
受診当日の朝も食欲は全く無くずっと震えていましたが、おやつだけはしっかり食べていました。
明暗を分けた血液検査
2022年10月1日。
動物病院を受診した私の説明を聞いたかかりつけの獣医師も最初は、
「急性胃腸炎の可能性が高いですね」と仰っていました。
ここで獣医師から「老犬なので念のため血液検査を受けてみてはどうですか?」と提案されます。
いつもの私なら迷うことなく「お願いします」と言うのですがこの日は迷いました。
何故なら10日前に健康診断を受けたばかりで丁度結果も届いており「問題無しのA判定」だったからです。
「一週間前に受けた健康診断の結果も問題無いですし投薬しながら様子見ではダメですか?」
と私は獣医師に尋ねました。
ここで引き下がらずに、
「急性疾患だった場合、一週間前の検査結果はアテになりません。万が一を考えるならば血液検査を受けたほうがいいですよ。」
と再度念押ししてくれた獣医師には今でも本当に感謝しています。
この一言で私も考え直し血液検査をお願いしました。
結果、肝機能を司る項目であるAST/GOT・ALT/GPT・ALPの数値が跳ね上がり、炎症反応を示す白血球数とC反応性蛋白も基準値を上回っており、病室には一気に緊張が走りました。
その時の検査結果がこちらになります↓
たった10日です。
たった10日でこんなにも急変してしまうのが肝膿瘍の恐ろしいところです。
そのまますぐに腹部エコー検査を実施。
エコー画像に映し出されたちょちょの肝臓には複数の黒い塊が散見されました。
10日前の健康診断を受けた時には無かったものが突然現れたことからまず腫瘍の疑いが除外されました。
残った可能性は「炎症」と「細菌感染」。
ちょちょは胆石症を患っているので、胆のうが炎症を起こしそれが肝臓に波及したのではないかと獣医師は考え、腹部エコーを実施した際に胆のうもしっかり診てくれていました。
が、胆のうの状態は問題無し。
いよいよ細菌感染による肝膿瘍の疑いが濃厚となったため細胞診を実施した結果、細胞内に丸い球(※球菌)が大量に散見されました。
この結果から「細菌感染による肝膿瘍」と診断され、抗生剤:ビクタスS錠を投与しながら様子を見ることとなりました。
自然界のいたるところに存在している細菌。
球菌の一部は人や動物の常在細菌として体表面や体内に生息している。
だが、中には病原性を持ちさまざまな感染症の原因となる菌もいる。
例)黄色ブドウ球菌、髄膜炎菌など
犬の肝膿瘍の食事で気をつけること:自己判断で食事療法を中断するのは危険!
ここからは私が犯した過ちを反省の意も込めてお話していきます。
皆さんも私と同じ過ちをしないように気をつけてください。
受診後、抗生剤が効き始めたようで翌日からドッグフードを少しずつ食べるようになりました。
10月3日の夕飯時にはおかわりの催促までしてくるようになったので、すっかり元気になったと勘違いしてしまった私は、自己判断で獣医師から指示されていた食事療法を中断し、給餌量を病気になる前の量に戻してしまいました。
20時30分頃からちょちょの体調が急変しました。
体を大きくブルブルと震わせながら呼吸もどんどん荒くなり、目を細め、なんとか痛みに耐えているといった感じでした。
この時点で一度動物病院へ連絡しようかと思ったのですが、そのままちょちょが寝てしまったので落ち着いたのかな?とこれまた勘違いをしてしまいました。
23時30分。
寝ていたちょちょがよろよろと起き上がり、先ほど以上に身体をガタガタと震わせ、ふらつきながら少し歩いた後そのまま倒れこんでしまったのです!
(これはマズい!)
と思った私はすぐに夜間動物救急センターに電話し車を走らせました。
夜間動物救急センターに到着後、すぐに内診と腹部エコーを実施。
ですが、内診と腹部エコーでは10月1日に診てもらった状態から特に変化はみられず、念のため血液検査もすることになりました。
30分後、結果がでたと獣医師に呼ばれ診察室に入るとふらつきながらも院内を歩き回るちょちょの姿がありました。
なんかさっきより元気になってない?
とりあえず血液検査の結果を聞くも、良くもなっていないが悪くもなっていないという何とも言えない結果。
ここで私は病院に向かう準備をしている途中、ちょちょが嘔吐したことを思い出し獣医師に伝えました。
獣医師からは、
「回復してきているように見えても肝臓内に溜まった膿は2~3日では消えない。」
「食べ物が沢山入ってきたことによって胃が活発に動き、振動が肝臓に伝わって痛みとして現れたのだろう。」
「沢山入ってきた食べ物を消化するために弱っている肝臓も働かざるを得なくなり吐き気を催してしまった。元気になったのは吐いたことにより多少スッキリしたためです。」
と注意を受けてしまいました。
ご飯を食べてくれるようになったのが嬉しくてつい気が緩んでしまったせいで、ちょちょに辛い思いをさせてしまいました。
薬が効いてくると犬はご飯を食べたがりますがそれは、
「薬が効いているから調子が良くなっているように見えるだけ」
ということを飼い主である私達は忘れないようにしないといけません。
肝膿瘍に限らず消化器の病気を罹った場合、最低でも1週間は給餌量と与えるフードに気を配る必要があります。
愛犬が元気になったように見えても自己判断で食事療法を中断せず獣医師からの指示を守りましょう。
獣医師もびっくり!肝膿瘍からの早期回復劇!
その後猛省した私は、改めて獣医師から食事療法を学び、自らもネットで調べ、都度獣医師に確認をとりながら治療に専念しました。
そうして迎えた2022年10月8日の再検査。
まずはこちらの再検査の結果をご覧ください↓
まだ基準値には戻っていませんが、
たった一週間で数値が軒並み減少しました!
これには担当獣医師もびっくりしており、
「ここまで老犬が早く回復するとは思わなかった!」
と驚きを示していました。
愛犬の肝膿瘍を早期回復させるために私が実践したこと6つ
私は医者ではないので確かなことは言えませんが、自分なりに「これが良かったのではないか」と思うことをまとめてみました。
- 初期の段階で病院を受診し適切な検査を受けたことによって早期発見につながった
- 肝臓への負担を軽減するために給餌回数を2回から3回に増やした
- 元々療法食を与えていたため脂質やタンパク質の制限ができていた
- ホイル蒸しにした鱈(たら)を与えた
- キャベツとりんごを与えた
- 日頃から水素水を飲ませていた
初期の段階で病院を受診し適切な検査を受けた
まずは何と言っても初期の段階で病院を受診し適切な検査を受けたことが早期回復に繋がったと思います。
冒頭でも説明しましたが、肝膿瘍は早い段階で適切な治療を受けることができれば回復する可能性が高い病気です。
肝臓への負担を軽減するために給餌回数を2回から3回に増やした
食事回数を増やし一回あたりの量を減らしたことも早期回復に繋がったと思います。
肝膿瘍に限らず消化器疾患全体に言えることですが、一度に食べる量が多いと肝臓に負担がかかってしまうので、食事は1回の量を少なめにして3~6回に分けて与えるようにすると負担が軽減されます。
脂質やタンパク質の制限ができていた
ちょちょは「腎嚢胞」という病気も患っており、普段から療法食を食べています。
結果として脂質やタンパク質の制限が出来ていたことで肝臓への負担が軽減されました。
肝機能が低下しているときは、治るまでは療法食に切り替えて脂質やタンパク質を制限したほうが早期回復に繋がります。
ホイル蒸しにした鱈(たら)を与えた
肝臓に配慮した食べ物を与えたことも早期回復に繋がったのかなと思っています。
肝臓の再生にはタンパク質が必要不可欠ですが、消化性の高い良質なタンパク質でないと肝臓に負担をかけてしまいます。
私が普段からトッピングとして与えている鱈は高タンパク低脂質で消化にも良い、肝機能回復にはもってこいの食材の一つです。
ドッグフードに食材をトッピングする場合は必ず獣医師に確認をとってから与えてください。
キャベツとりんごを与えた
キャベツには活性酸素から体を守る働きをもつビタミン類が豊富に含まれており、りんごには塩分の排出を促す効果を持つカリウムが豊富に含まれています。
どちらも肝臓を助けてくれる栄養素を豊富に含んだお助け食材だよ♪
我が家ではちょちょが気に入ってくれたこともあり、肝膿瘍が治ったあともトッピングとして与えています。
ドッグフードに食材をトッピングする場合は必ず獣医師に確認をとってから与えてください。
日頃から水素水を飲ませていた
水素水に関しては医学的なデータはまだありませんが、効能に「抗酸化作用」と「抗炎症作用」があります。
水素水の効能を得るには一定期間飲ませ続ける必要があるので、病状が悪化してから飲ませてもすぐには効果を実感できないこともあります。
ですが、「予防」という観点からは効果が期待できると思いますので、興味が湧いた方は試してみてはいかがでしょうか?
犬の肝膿瘍の予後について
2022年11月5日。
前回の診察から約一ヶ月経ちました。
ちょちょは抗生物質の投薬を続けながら治療に専念していました。
治療中の様子は、抗生物質の副作用は特に無く、食事も元の量を食べられるようになり経過は順調です。
そしていよいよ迎えたエコー再検査の日。
肝臓に溜まっている膿瘍が減少しているかどうかを確認します。
検査の結果、なんと肝臓の膿瘍は減少どころかほとんど消滅していました!
担当獣医師も再度びっくりしながら、
「老犬でここまで早期に回復した例はあまり無いので凄いです!」
と褒めていただけました。
とはいえまだ完治ではありません。
最初に説明したように肝膿瘍の治療は長期戦となります。
更にちょちょの場合「胆石症」を患っているため再発率が非常に高く、今後も定期的にエコー検査をすることが必須となってしまいました。
その後、2022年11月30日にエコー検査をしたときの肝臓内はすっかり綺麗になっており一旦は「完治」したのですが、翌年2023年1月25日に再発し、治療をしています。
犬の肝膿瘍は発症原因によって再発率が大きく変わります。
一過性の細菌感染や手術によって原因となっている臓器を摘出している場合の再発率は低いのですが、ちょちょのように肝臓周辺臓器の疾患を患っている場合は再発率が高いので、日頃から愛犬の健康状態に注意することは勿論ですが、定期的に血液検査やエコー検査をしていくことが大切になります。
2023年1月の再発では、私自身にも経験と知識がついたおかげですぐに適切な治療を開始することができ、経過は良好です。
まとめ:犬の肝膿瘍は早期発見と定期健診で予後を良好に保つことができる
犬の肝膿瘍はとても怖い病気ですが、早期発見と定期健診で予後を良好に保つことができる病気です。
今回ちょちょが罹患した「犬の肝膿瘍」という病気。
この記事を読んで初めて知ったという飼い主さんも多いかと思います。
私は獣医師たちの反応をみて本当に珍しい病気なんだと感じたと同時に、早期発見できれば助かる可能性は充分あるのに、認識不足によって命を落としてしまう危険性があることに大きな危機感を覚えました。
広いネットの海の中から偶然この記事にたどり着いてくれた読者さんに是非お願いしたいことがあります。
どうかこの「犬の肝膿瘍」という病気のことを友人や知人にも教えてあげてください。
この記事をきっかけに、一人でも多くの飼い主さんにこの病気のことを知ってもらえれば幸いです。