「服用中の抗てんかん薬で副作用が出てしまった。他の抗てんかん薬について情報が欲しい。」
「自宅でてんかん発作を起こしたときの為に、緊急投与できる薬を探している。」
はじめまして
てんかんを患っている愛犬と暮らして9年になる飼い主のりあです。
てんかん歴9年のちょちょです。
私は、迷い犬だった愛犬を保護してからわずか2週間で「てんかん」と対峙することになりました。
当時の私は、テレビやネットで「てんかん」という病気があるという程度の知識しか持ち合わせていませんでしたが、この9年間、様々な文献を読み漁り、獣医師の方々から直接お話を伺いながら知識を深めてきました。
犬の抗てんかん薬に関する情報は、沢山の動物病院のサイトで紹介されていますが、この記事では、現在も犬のてんかん治療を続けている飼い主の目線から、専門用語は極力控え、できるだけわかりやすく、抗てんかん薬の種類と副作用の情報を紹介していきます。
- 犬の抗てんかん薬(飲み薬)の種類・効果・副作用について
- 犬の抗てんかん薬(坐薬)の種類・効果・副作用について
- 【豆知識】薬の名前について
「てんかん」という病気については、下の記事で詳しく解説しています。良ければ読んでみてください。
薬には3つの名前があることを知っていますか?
抗てんかん薬の種類を紹介していく前に、皆さんに是非知っておいてほしいことがあります。
皆さん、こんな経験はありませんか?
お医者さんから処方されている薬は変わっていないはずなのに、いつも薬を受け取るA薬局の処方箋に記載されている薬の名前と、その日たまたま立ち寄ったB薬局の処方箋に記載されている薬の名前が違っていて、違う薬を処方されたのかと思い、問い合わせをした。
というような経験です。
こういったややこしい事態になる原因は、薬には3つの名前があるからです。
1つ目の名前は「化学名」と呼ばれるもので、薬の構成元素や分子構造を表している名前です。
ネットで薬の情報を検索するとよく出てくる長ったらしいやつです。
2つ目の名前は「一般名」と呼ばれるもので、化学名を簡素化した名前です。
3つ目の名前は「商品名」と呼ばれるもので、製薬会社が独自に命名し、国の認証を受けて付けた名前です。
従来、私達が医師から直接耳にしたり、処方箋で視認していたものは「商品名」でした。
ところが、平成24年の診療報酬改定で政府が「一般名」による処方を積極的に使用するようにと方針を変更したことにより、「一般名」と「商品名」が混在するようになってしまったのです。
この記事では、タイトルの冒頭に「一般名」を、()内に「商品名」を記載していきます。
犬の抗てんかん薬の種類:飲み薬編
犬の抗てんかん薬には毎日服用させる飲み薬と、自宅で発作が起きたときに緊急薬として使用する坐薬の二種類があります。
まずは毎日服用することになる飲み薬を紹介させていただきます。
ゾニサミド(コンセーブ・エピレス)の特徴・効果・副作用・注意点
- 服用回数:1日2回
- 日本で作られた唯一の抗てんかん薬
- 最近はファーストライン(第一次選択薬)として使用されている
- コンセーブ錠は細かく砕いて投薬してもOK
- エピレス錠はメープルシロップが含まれており飲みやすい
- 他の抗てんかん薬に比べて副作用が少ない
- 血中濃度が4~5日で安定域に入るケースが多い=他の抗てんかん薬より効き目が早い
- 他の抗てんかん薬に比べて価格が高い
ちょちょが服用しているのは、ゾニサミドのエピレス錠だよ。
エピレス錠は、錠剤からほんのりメープルシロップの甘い匂いがします。
ちょちょは今のところ副作用も無く、安定して服用できていますよ。
- 四肢や頭部が部分的に軽く震える
- 元気消失
- 食欲不振
- 嘔吐
- 稀に急性肝機能障害を引き起こすことがあるが、他の抗てんかん薬と比較すると確率はかなり低い
- フェノバルビタールからゾニサミドに切り替える場合、慎重に投与する必要がある
- 妊娠中・授乳中の雌犬への投与はできない
- 貧血を起こしている犬への投与はできない
- 過去にスルホンアミド系薬剤(サルファ剤、アセタゾラミド、スルホニルウレア剤等)に対して過敏症を起こした犬への投与はできない
- 腎疾患または肝疾患を持つ犬には慎重に投与する必要がある
フェノバルビタール(フェノバール)の特徴・効果・副作用・注意点
- 服用回数:1日2回
- 他の抗てんかん薬に比べて長い使用歴がある
- 錠剤・シロップ・粉から薬剤形態が選べる
- 他の抗てんかん薬に比べて価格が安い
- 血中濃度が安定域に入るまでに2週間かかる
- 多飲多尿
- 食欲・体重増加
- 元気消失
- ふらつき
- 皮膚に発疹や赤みがでることがある
- 長期投与により肝機能障害・腎機能障害・貧血を引き起こす可能性が高くなる
- フェノバルビタールからゾニサミドに切り替える場合は注意が必要
- 妊娠中・授乳中の雌犬への投与はできない
- 他の薬と併用する場合、注意しなければならないことが多い
- 過去にバルビツール酸系化合物に対して過敏症を起こした犬への投与はできない
- 腎疾患または肝疾患を持つ犬には慎重に投与する必要がある
臭化カリウムの特徴・効果・副作用・注意点
- 服用回数:1日2回
- 薬剤形態は粉のみ
- 単独でのコントロールは難しいので、ゾニサミドまたはフェノバルビタールと併用するのが一般的な使い方
- ゾニサミドまたはフェノバルビタールと併用することで70~90%のてんかんに有効
- 他の抗てんかん薬に比べて価格が安い
- 血中濃度が安定域に入るまでに約2~4ヶ月かかる
- 食欲・体重増加
- 嘔吐
- 下痢
- 膵炎(重症の場合)
- 多飲多尿
- 元気消失
- ふらつき
- 皮膚に発疹や赤みがでることがある
- 長期投与により臭素中毒を発症することがある
- 妊娠中・授乳中の雌犬への投与はできない
- 過去に過敏症を起こした犬への投与はできない
- 尿路結石に罹患し、塩分の多い食事をとっている犬にはあまり効果がない
- 腎疾患を持つ犬には投与できない
- 肝疾患を持つ犬には慎重に投与する必要がある
レベチラセタム(イーケプラ)の特徴・効果・副作用・注意点
- 服用回数:1日3回
- 新しい抗てんかん薬
- ゾニサミドと併用することが可能
- 薬の効果が早い
- 他の抗てんかん薬に比べて副作用が少ない
- 他の抗てんかん薬に比べて価格が高い
- 肝機能障害を患っている犬にも投与可能
- 元気消失
- 嘔吐
- 下痢
- 妊娠中・授乳中の雌犬への投与はできない
- 過去に過敏症を起こした犬への投与はできない
- 腎疾患を持つ犬には慎重に投与する必要がある
ガバペンチン(ガバペン)の特徴・効果・副作用・注意点
- 服用回数:1日3回
- 2006年に日本で認可された比較的新しい抗てんかん薬
- 他の抗てんかん薬に比べて副作用が少ない
- ふらつき
- 元気消失
- 下痢
- 嘔吐
- 食欲・体重増加
- 妊娠中・授乳中の雌犬への投与はできない
- 過去に過敏症を起こした犬への投与はできない
- 腎疾患または肝疾患を持つ犬には慎重に投与する必要がある
プレガバリンの特徴・効果・副作用・注意点
- 服用回数:1日2回
- 難治性てんかんに使用される強力な抗てんかん薬
- 犬ではまだ多くは使用されていないためエビデンス不足
- ふらつき
- 下痢
- 嘔吐
- 使用の際は低用量から開始すること
- 妊娠中・授乳中の雌犬への投与はできない
- 過去に過敏症を起こした犬への投与はできない
- 腎疾患または肝疾患を持つ犬には慎重に投与する必要がある
犬の抗てんかん薬の種類:坐薬編
ここからは坐薬を紹介させていただきます。
坐薬は、自宅でてんかん発作が起きたときに緊急薬として使用する薬です。
何本か常備しておくことで、動物病院が長く閉院してしまうGWやお盆、年末年始の緊急時にも備えることができます。
ジアゼパム(セルシン)の特徴・効果・副作用・注意点
- 使用回数:状況に応じて1日1~3回まで使用可能
- 家庭で使用する場合は錠剤か坐薬での使用方法がある
- 長期的に連続投与すると耐性が出来て効果が減少していく可能性がある
- ふらつき
- 元気消失
- 妊娠中、授乳中の雌犬への投与はできない
- 過去に過敏症を起こした犬への投与はできない
ミダゾラム(鼻腔内投与)の特徴・効果・副作用・注意点
- 使用回数:状況に応じて1日1~3回まで使用可能
- 犬の鼻からミダゾラム液を吸入させる方法
- 2019年に犬にも効果があることが分かってきた新しい緊急対処療法
- ミダゾラムを鼻腔内投与した結果、76%の犬はてんかん発作が停止した
- 重積発作の管理において迅速・安全であることが証明されている
- 使用期限:冷蔵保存で半年
- 大量のよだれ
- ふらつき
- 眠気
- 元気消失
- 過去に過敏症を起こした犬への投与はできない
ちょちょはゾニサミド(エピレス錠)の服用を始める前は、ミダゾラム鼻腔内投与で、てんかん発作に対処していたよ。
ちょちょの場合、ゾニサミドの服用を始めてから現在まで、一度もてんかん発作を起こしていないので最近は使っていませんが、万が一に備えて、冷蔵庫に必ず1本は常備するようにしています。
まとめ:愛犬に合った抗てんかん薬を見つけてあげよう
犬の抗てんかん薬には様々な種類があります。
抗てんかん薬にはそれぞれ異なる作用、副作用があり、犬の種類や症状、病歴によって適した薬剤も異なります。
愛犬の症状や体調をよく観察し、獣医師と相談しながら、最適な抗てんかん薬を選択してあげることが重要です。
この記事が、愛犬の抗てんかん薬を探している飼い主さんの助けになれば幸いです。
我が家の愛犬が服用している「ミダゾラム鼻腔内投与」と、「ゾニサミド(エピレス錠)」については、こちらの記事で詳しく解説しています。気になる方は是非読んでみてください。